ドローンとして一般的に知られている無人航空機 (UAV)の、商業目的あるいは娯楽用の使用が広まっている。しかし、使用が広まるにつれ、空域安全に関する懸念も発生している。この数年間、欧州委員会、欧州議会および欧州連合理事会は、ドローン産業の安全かつ環境に配慮した発展を促進する政策に取り組んできた。ドローンの使用に関する規則が各加盟国間で異なるため、欧州委員会は「EUの航空セクターの競争力を向上するための航空戦略」 (COM (2015) 598 final)に関する提言の中で、無人航空機の操縦をEUレベルで規制する、新たな共通基準規則の設定を提案した。

しかし、この法的手続きはドローンの使用を制限する基準を設けるだけに過ぎず、ドローンと有人航空機による衝突事故の危険性を低減あるいは排除する、より高度な安全性を実現するためには、さらに技術的な改善措置の導入が必要である。欧州委員会はEASAにドローンの使用規則の策定任務を与え、EUにおけるドローンの操縦を安全に普及させる法的枠組みを提案している。飛行制限区域における意図的あるいは非意図的な飛行を防止するため、ジオ・フェンシングのようにドローンの飛行を機能的および地理的に制限する措置が必要になると推測される。

一方で、ドローンと有人航空機によるニアミスの件数が増加している。米国連邦航空局(FAA)によると、米国内だけでも、ドローンによる航空機への異常接近事故数が2014年に238件発生したのに比べ、2015年には650件発生したとのことである。主要な空港の付近で発生した、小型UAVsと航空機によるニアミスの報告件数は航空運輸業界と各国の規制当局にとって重大な懸念事項となっている。

フランスの飛行機事故調査機関のBEAは、2016年2月に発生した、シャルル・ド・ゴール空港へ着陸しようとしていたエールフランスのエアバスA320便と無人航空機によるニアミスを含む、「重大なニアミス事件」に関する調査を実施している。2016年3月17日にロサンゼルスの東22.5 km、高度152メートル上空で、ドローンがルフトハンザA380とニアミスを起こしたように、航空機とドローンのニアミスが発生している。ニアミスの件数が増加していたことを踏まえれば、大事件が発生するのは時間の問題であった。

そして2016年4月17日、ロンドンヒースーロー空港に着陸しようとしていた英国航空(BA)の航空機と、ドローンと思われる未確認物体が衝突した模様である。エアバスA320は安全に着陸し、機体に何らの損傷もなかったが、ロンドン警視庁は今回の衝突事故を捜査している。ロンドン警視庁によると、ドローンが英国航空の航空機の前面に衝突したと、同航空機のパイロットが報告をしたとのことである。整備士が着陸した同航空機を点検した結果、次のフライトに支障がないと判断されたため、同航空機は予定どおり次のフライトには復帰した。

今回の衝突事故は、英国の空域で発生した、ドローンが関連する一連の衝突事故の中で最新の出来事である。英国民間航空機関のスポークスマンによると、ドローンの操縦者は責任をもってドローンを操縦し、関連する規則を遵守すべきであるとのことである。空港付近でドローンを飛行させることは言語道断であり、これらの規則を破るものは、禁固など、厳罰に処される。

報告によると、2015年4月から2015年10月23日の6ヵ月の期間において、航空機とドローンによる事故が23件も発生したことを、英国航空のセキュリティ部門のデータが示しているとのことである。特に欧州および米国においてこのようなニアミスの件数の増加が顕著であり、各国の政府機関は個人所有のドローンおよびその操縦者を追跡することができない。国際航空運送協会のトニー・タイラー氏は、ドローンが商業目的の航空の妨害あるいはその安全性の脅威となることは許容できないと言明した。民間航空機の安全性に対する脅威が現実に存在し、その脅威が今も増大していることは紛れもない事実である。 (欧州コンサル 160426)