講 演 者 あ と が き

 本文は、1994年7月7日に行われた各航空会社の労働組合の集まりである日本乗員組合連絡会議(日乗連)の主催する学習会の講演記録です。ひとえに私の怠慢から講演記録の手直し作業が遅れ、8月末の締切日がとおに過ぎてしまいました。それでも10月初旬には何とか作業を終え、ホッとしています。
 放射化学、放射線防護学を専門とする私の主たる関心は、人間が遭遇しているあらゆる放射線被曝の実相を明らかにすることです。大学で放射線管理を行っている私が、旧ソ連のセミパラチンスク核実験場の環境汚染や旧ソ連・ロシアの放射性廃棄物の海洋投棄など核兵器開発にともなう諸問題、あるいは原子力発電問題などに首を突っ込むのは、国民のひとりとして関心があるということもありますが、実は以上のような理由によります。もっとも、浅学非才のためいつも「群盲象をなでる」がごとき有様で、自己嫌悪に陥ることも「まま」ありますというより、「しょっちゅう」です。
 航空機乗務員の宇宙線に起因する放射線被曝問題についても以前から関心を持っていたのですが、さまざまな放射線が入り混じっている二次宇宙線の線量測定や人体影響評価の難しさなどを考えると、情けない話ですが手をこまねていたというのが実情です。しかし、1990年に、航空機乗務員の宇宙線に起因する放射線被曝を職業被曝とすべきであると国際放射線防護委員会(ICRP)が勧告して以来、この問題をめぐって私の身辺も慌ただしくなってきました。日本航空鰍ェフィルムバッジを使って航空機乗務員の被曝線量の予備的調査を行った結果を公表したけれども、これをどう解釈すればよいのか。そもそも航空機乗務員の宇宙線に起因する放射線被曝とは何なのか。これらのことについて勉強会をしたいので講師になってほしいと、1991年春のことだったと思いますが日乗連から講演依頼がありました。日乗連の方がたがとても熱心で、いろいろな資料を持って私のところに何度もやってきました。こうして日乗連の勉強会の講師になったことが縁で、この問題にもとうとう首を突っ込むことになりました。
 日本保健物理学会は「航空・宇宙放射線防護専門研究会」なる委員会をつくり、この問題を1994年4月から2年間かけて検討することにしています。幸い私もこの専門研究会の委員ですので、日乗連の調査活動の結果を専門研究会の場で大いに役立てたいと考えています。
 なお、本報告の冒頭の部分で向井千明さんのことを述べましたが、これはもちろん7月7日の学習会ではなかったものです。         (野口邦和)


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