は じ め に
520名の命を奪った日航123便事故から11年が過ぎようとしています。
1977年3月27日にスペイン領カナリア諸島のテネリフェ島で発生した、
583名の死者を出したジャンボ機同士の地上での衝突事故に次ぐ大惨事で、1機の事故としては世界最悪の記録です。
十年一昔という言葉のように、航空関係の職場に働く人の中でも当時の記憶が薄れ、「当時は小学生でした」という人も増加してきています。
この重大な事故の原因に関する運輸省事故調査委員会(事故調)の結論は、私たち航空の職場で働くものには到底納得できるものではなく、私達はこれまでも繰り返し再調査などを要求し続けてきました。
この事故調査の経過を振り返ってみると、事故発生から3日後に操縦室音声記録装置(CVR)と飛行記録装置(FDR)が運輸省に搬入され、解読が開始された8月15日の朝、事故調の藤原次席調査官は「16日に今後の調査のおおよその方針を決めたい」と発言しています。翌々日の17日付の新聞は、「後部圧力隔壁の修理ミスが引き金となって、隔壁破壊、与圧空気の噴出・急減圧 垂直尾翼の破壊 油圧系統の破壊操縦不能 墜落」と報じ、事実上の事故調査の結論の方向を決定しています。
事故調によるその後の調査は、この結論に合致する証拠のみを選択し、
矛盾するような事実は無視し(例:生存者の、「耳は軽く詰まった程度」という証言など)、あるいは「その理由を明らかに出来なかった」(例:客室高度警報とされている音が、1秒間しか鳴らなかったこと)などと逃げ、
都合の悪い実験結果は隠したり改ざんするなどして、初めに決めた結論にこじつけています。このようなやり方は、到底、科学的な調査とは言えません。
また、最近不起訴が決定した花巻空港DC9ハードランディング事故(93年4月18日)の調査でも、結論は「乗員のミス」と決め、その理由を「地理的に見てウインドシヤーはなく、乗員が速度の低下に気づかず失速したのが原因」としていました。ところが、実際の速度が失速速度より大きかったことや、日乗連の調査でウインドシヤー(風の急激な変化)の存在が否定できなくなると、今度は「乗員のウインドシヤーに対する注意不足が原因」と理由を変更しています。
この経過を見ると、結論は「乗員のミス」と決めておいて、理由は後から考え、適当に付けたとしか思えません。「結論」が先に決定され、結論と矛盾する新たな事実が出てきても、結論は変更しないという事故調の調査方針が見えてきます。
なぜこのような非科学的なことをするのでしょうか?
航空機の事故では、多額の損害賠償や、業務上過失を理由にした責任追及が行われます。国や企業は責任逃れのために「事実隠し」をし、結果、
事故原因をゆがめているのではないでしょうか。
HIV汚染血液製剤事件での資料隠しや、高速増殖炉「もんじゅ」のナトリウム漏れ事故のビデオ隠し事件、その他の公害事件などと全く同じことです。
安全に関わるミスなどについて、過度に厳しい不利益扱いや刑事責任の追及が行われると、真の原因追求の鍵になるような重要な事実が隠されてしまいます。真実の情報が得られないと真の事故原因は解明できません。真の事故原因が解明されなければ、有効な安全対策は不可能です。
今回は日航123便墜落事故と花巻DC9事故を例に、日本の事故調査をもう一度考え直してみたいと思います。
その上で、日航123便事故の再調査を改めて要求したいと思います。