【事例2】花巻空港DC9型機ハードランディング事故
■花巻事故の調査は乗員処分が目的
花巻空港事故では、強風の中花巻空港に着陸しようとしたDC9型機が、
接地直前に急に高度を失い、ハードランディングとなり、接地後火災が発生、機体は大破炎上しました。乗客は全員脱出しましたが、搭乗者77名中3名が重傷、55名が軽傷を負いました。
93年10月29日の新聞紙上(資料6)では、
| 運輸省の航空事故調査委員会は、 FDRの結果をもとにシミュレーターでの実験を行った。 その結果、事故機の速度が着陸前10秒前後から異常に速度が下がり続け、 接地直前には異常降下を記録していた可能性が高いことがわかった。 失速警報は作動していなかったが, 事故調ではスピード不足から着陸寸前瞬間的に大きな揚力低下が起こり 滑走路にたたきつけられた珍しい事故、との見方を強めている。 着陸前20秒前後から130ノットを下回り始め、着陸10秒前には120ノット、 さらに着陸5秒前には110ノットを切っていた。 JASの規定では、今回のような気象条件下では 着陸時の速度は130ノットを少し超える程度を維持しなければならない。 事故調では、地理的関係からも突風などはなく、 横風と事故原因との直接の関係はないと見ている。 むしろ操縦していた副操縦士が横風で機が滑走路をはずれないことに気をとられ、 速度を誤ってバランスを崩した可能性があるとしている。 |
と報道しています。
要するに、「花巻には地形から見て突風などの風の影響はない。事故原因は乗員が速度の低下に気づかず、失速して滑走路上に落下したことであり、乗員の操縦ミスである。」という、いわゆるパイロットミスが結論となっています。
ところが、事故機の失速速度は92ノットで、FDRの記録では120ノット程度を示していて、誤差を考えても110ノットはあったことは確かで、失速はありえません。
この事故について日乗連では、気象データと乗員の報告から見て、ウインドシヤーと、ハードランディングが多いDC9型機の空力特性に疑いを持ちました。そこで、京都大学防災研究所の協力を得て、独自に音波レーダーなどを使用してウインドシヤーの調査を行い、更に、日米の定期操縦士会の協力を得て、ウインドシヤーに対する乗員の反応、機体の操縦性などについて、アメリカでシミュレーターをレンタルしてデータを取りました。その結果、花巻空港では300ft以下の低高度でも上下方向の風が観測され、ウインドシヤーが存在していたことが確認されました。又、
乗員のウインドシヤーからの回復に要する時間は、ウインドシヤーの認識から、それに対する操作に機体が反応するまでに約11秒が必要であることが確認されました。従って、200ft以下の低高度でウインドシヤーに遭遇した場合、脱出はきわめて困難であることが明らかになりました。
日乗連はこの調査結果を94年9月30日に発表しました。
■理由は変えても乗員のミスは変えない
事故調は日乗連の調査報告書が発表された後で、95年12月2日、この事故に関する調査報告書を公表しました。推定原因は、
風向風速が大きく変動する強風下で、 ウインド・シヤーに対する十分な警戒をすることなく着陸のための進入を行い、 過走帯付近を通過する際、激しいウインド・シヤーに遭遇したため、 機体が急激に降下して、ハードランディングし、 火災が発生したことによるものと推定される。 |
さらに、所見として次のように付け加えました。
| 風向風速が大きく変動する気象条件下で着陸しようとした際、 ハードランディングしたことによるもので、 このような気象条件下で着陸する場合は、 常に機を失せず着陸復行をすることも含め安全上最適の措置をとるよう、 細心の注意を尽くして運航することが必要である。 なお、機長及び副操縦士は、定期航空輸送事業に従事する運航乗務員としての使命を自覚して、 それぞれの職分に応じ、より一層安全意識に徹することが肝要である。 |
日乗連などの調査で、花巻空港周辺にはウインドシヤーがあることが確認されたため、報告書ではウインドシヤーがなかったとは言えなくなりました。また「失速」はあまりにも事実からかけ離れた、非現実的な憶測で、さすがにこれも撤回し、原因を変更したものと見られています。
乗員の過失だとするには、その異常事態を「予見」することが出来、それから「回避することが可能」であったことを明らかにしなければなりま
せん。これが証明できなければ「不可抗力」という結論になるのが当然です。
報告書では、速度が変化しているから「ウインドシヤーを予見」できたにも拘わらず、GPWS(対地接近警報装置)の降下率警報(シンクレイトとの音声警報)が作動した接地9秒前の時点で回避操作を行なっていない、
だから乗員のミスだと言おうとしているようです。
事故機が、遭遇したウインドシヤーを「予見」し、それから「回避できるか、出来ないか」については全く調査はしていません。速度がどの程度変化したらウインドシヤーを予測すべきなのか、その基準も全く示していません。
事故機がウインドシヤーに遭遇し、速度低下が始まったのが接地10秒ほど前です。ウインドシヤーの回避には11秒程度を必要とすることは、日乗連の調査で明らかです。従って、回避は不可能と見られています。
事故調はこのような調査もやらずに、ただ漠然と「十分な警戒をしていなかった」と言うだけで、これでは「乗員の不注意」であるという具体的根拠はなにも示していません。
事故調の報告書と93年10月28日の新聞発表と日乗連の報告書とを併せて読むと、事故調は結論としてこの事故はパイロットミスにする方針を持って調査を進め、ウィンドシヤーがあったことが確認され、回避不可能であることがわかっていても、「結論」だけは変えずに、漠然と注意不足を付け加え、無理矢理、乗員の行政処分などの責任追及の材料を作ろうとしたとしか考えられません。